【外海の出津集落】in長崎4ーーオラショを唱え、秘かに信仰を続けてきた里に現れた救世主

長崎ーーNagasaki
長崎ーー平和と祈りの都市 Nagasaki
1571年頃に外海一帯にキリスト教の布教が始まり
一時は5,000人近い信者がいたと言われています。
 
幕府の禁教令が出されても外海地区は神道の信仰
を装いながら神社に自らの信仰の対象をまつり
秘かに信仰を続けてきました。
 

Column

長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産
キリスト教宣教地の日本列島の東端にあたる
長崎と天草地方は最も集中的に宣教が行われた

◆禁教令の中で長崎と天草地方において一般
社会と共生しながら信仰を続けた証明となる
遺産群

◆潜伏キリシタンの伝統の始まりからその形成
維持、拡大の軌跡。終焉を迎えるまでの歴史を
語る上で必要不可欠な12の構成資産

 
潮風を感じながら海沿いのドライブが気持ちいい
です。202号線はサンセットオーシャン202と
呼ばれていてドライブがてら絶景を望めます。
 
長崎市唯一の道の駅「夕陽が丘そとめ」では素晴ら
しい夕陽を望めます。夕日が拝める時間に訪れたい
です。
 
◆Pick up◆

カトリック黒崎教会

建設年:1920年(大正9)
設計:不詳(マルク・マリ・ド・ロ神父説) 
施工:川原忠蔵
構造:煉瓦造平屋建

◯現教会堂はド・ロ神父亡き後、大正9年(1920)
 バルブ神父によって完成
 
聖堂は信徒や子供たちがひとつひとつ積み上げた
レンガで造られています。
 
信徒が長年奉仕した努力の結晶としてこの教会が
構成されています。
ーーミサが始まる前でしたが人が集まってきた
  ので上部だけ撮影しました
 
水色の窓が重厚な煉瓦積みのイメージを軽減して
見る人に威圧感を感じさせません。
また遠藤周作の小説「沈黙」の舞台にもなっています。
 
住所:長崎県長崎市下黒崎町1356
TELL:0959-25-0007
営業時間:9時00分~17時00分
定休日:年中無休
駐車場:有
入館料:無料(寄付をお願いします)

関連サイトhttps://www.catholic-kurosaki.com/

外海の大野集落ーーVillage

大野教会堂

森に囲まれた石造りの外見の可愛らしい教会。
ド・ロ神父が設計し、私財を投じて信徒とともに
建てた歴史が深い建築です。
 
坂を登った先の駐車場に車を置いて案内板に
沿って民家の横を抜けていきます。見学は事前
予約が必要のため、急遽前日に電話で予約しま
した。
 
◆Pick up◆

大野教会堂

建設年:1893年(明治26)
設計・施工:マルク・マリ・ド・ロ神父
構造:平屋建、瓦葺き

◯2018年6月30日 世界文化遺産登録

なんとなくわかるーーマルク・マリ・ド・ロ

1840年(天保11)にフランスの貴族の次男と
して誕生。神学校卒業後、東洋布教のため
パリ外国人宣教会に入会
ーーフランスノルマンディー地方、ナポレオン
  の血を引く貴族の出
          ⇩
キリシタン弾圧継続中の1868年6月(明治元年)
に隠れキリシタンが多く住んでいた外海地区に
死の覚悟をして来日。
ーー「魂の救済だけでなく、その魂が宿る人間
   の肉体、生活の救済が必要」と体感する
          ⇩
1878年(明治11年)外海地区の主任司祭に赴任
したド・ロ神父は「陸の孤島」と呼ばれ、厳し
い自然環境の中、長期のキリシタン弾圧にも
耐えながら、信仰だけを頼りに暮らしをして
いた人々と共に教会を中心とした町づくりを
目指した。
ーー孤児院や救助院を開設。授産など多彩な
  事業により、村人や女性たちの自立を支援
ーー技術や知識を外海の人々に授け
 「ド・ロさま」と呼ばれ親しまれる
 
外海の人々のために生涯を捧げ、一度も母国
フランスへ帰ることなく1914年(大正3)に逝去
ーー享年74歳
ーー現在は自らがつくった現出津共同墓に信徒
  たちと眠る。
 
石造の壁は100年以上経った現在でも健在している
玄武岩の割石を漆喰モルタルで固めた特殊な壁体
です。地元ではドロ神父からなぞって「ド・ロ壁
と呼ばれています。
 
側面の窓は上部を半円の明るい煉瓦がアーチ形に
なっていてド・ロ壁とのアクセントになっています。
 
正面(北側)に開口部がない代わりに壁の内側から
通り抜けができる風除室(前廊部)が設けられており
その通路から会堂内に入るようになっています。
 
十字架は掲げられていませんが、屋根瓦に十字架の
装飾を見ることができます。
 
堂内には入ることができません。
外から撮る分には構わないと言われたので内装
がわかる程度に紹介します。北側に会堂部、
南側に司祭室からなります。
 
軒下の梁の先端に施した装飾など設計者である
ド・ロ神父のこだわりが見られ、また風土に
則ったデザインが特徴です。
 
高台に教会が建っているため見晴らしも良く明日
の目的地である池島を眺めることができます。
 
現在は信徒数が少なくなったため、普段使いはされ
なくなりましたが、年に一度一日だけミサが行われ
当時の風景を感じることができます。
 
住所:長崎県長崎市下大野町2619
TELL:095-823-7650
営業時間:9時00分~17時00分
定休日:年中無休
駐車場:有
入館料:無料(寄付をお願いします)

関連サイトhttp://kyoukaigun.jp/visit/detail.php?id=9

外海の出津集落ーーVillage

外海歴史民俗資料館

外海地区の歴史、民俗資料を展示しています。
古代から現代までの祖先が残してくれた貴重な歴史
や昔の生活、産業を資料を通して見ることができます。
 
1階は農具など農家の暮らし。
池島炭鉱の歴史もここで見られます。
 
2階は長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産
に関する資料。ド・ロ神父の業績、弥生時代の遺跡
関連を紹介しています。
ーー隠れキリシタンのことがもっと知りたいなら
  訪れるべき場所です
  
ド・ロ神父記念館・外海歴史民俗資料館
共通入館券¥300なのでセットで訪れることを
オススメします。
 
住所:長崎市西出津町2800番地
TELL:0959-25-1188
営業時間:9時00分~17時00分
定休日:12月29日~1月3日
駐車場:有
入館料:¥150

関連サイト長崎市外海歴史民俗資料館

旧出津救助院

資料館に車を停めて向かいます。
途中でおもしろい建築を見つけたので立ち寄ってみます。
 
フランス・パリ外国宣教会の庭園に現存する建物
及び古写真を参考にデザインされた憩いの広場。
 
参考にした建物はド・ロ神父の最初の建築といわれ
日本に旅立つ際に最後に祈りをささげた場所と
伝えられています。
 
1879年(明治12)ド・ロ神父が村民の窮状を救うため
に私財を投じて建設した授産・福祉施設。
 
現存する授産場はド・ロ神父の設計施工により
1883年(明治16)に完成し、続いて鰯網工場
(ド・ロ神父記念館)を1885年(明治18)に竣工
しました。
 
救助院では日記、算術などの学業の他に
マカロニ、そうめんやパン、製糸・製織など
多彩な技術生産が行われた施設です。
ーー使用された機械器具はド・ロ神父がヨーロッパ
  諸国から購入したものです
 
授産場
木造及び石造、二階建、寄棟造、桟瓦葺の旧出津
救助院の中心施設です。
 
パスタ製造機が置いてありド・ロ神父が製法を伝え
た「ド・ロさまそうめん」が垂れ下がっています。
ーー特産品となっていてお土産に大人気!
  夕陽が丘そとめで購入できます
 
作業の様子を綴った日記と合わせて当時の作業情景
が想像できます。
 
1階は作業場、2階は修道女の生活場所・礼拝堂
として使用されました。現在はコンサートや講演会
を開催しています。
 
シスターが、オルガンを弾いてくれました。
このオルガンは”ハルモニュウム”といい、高音部3列
低音部2列のリードを持ち、美しい音色を奏でます。
 
ド・ロ神父が明治期に購入し、毎日のミサで使用していました。
100年以上前の楽器を今も使っていて、あまつさえ
音がしっかり出るなんて驚きです。
 
他にもマカロニ工鰯網工場が重要文化財
として構成されています。
手前の白い建物がマカロニ工場です。
煉瓦造、切妻造、桟瓦葺、漆喰塗り。
 
国内初のマカロニ工場で内部は東西2室に分かれ
建物から”ド・ロ塀”が延びています。
鰯網工場は木骨煉瓦造、平屋建、寄棟造、桟瓦葺。
鰯網の工場として建設されましたが、竣工の翌年
には保育所として利用されました。
 
主に救助院で働く人の子どもを預かっており
給食調理を行うなど、国内では先進的な施設
でした。
 
西洋の建築技術を取り入れた明治初期の授産・福祉
施設は明治初期において例をみない貴重な文化財です。
 
ド・ロ神父記念館
鰯網工場、保育所と役割を変えて現在は
ド・ロ神父ゆかりの品々が展示されています。
 
主な展示品は絵画や工芸品などの宗教関係が多く
また、医療や土木・建築といった社会福祉や産業
開発の技術を伝えるための貴重な資料もあります。
ーーシスターが説明してくれるので気軽に立ち寄り
  ましょう
 
住所:長崎県西出津町西彼町2633番地
TELL:0959-25-1081
営業時間:9時00分~17時00分
休業日:年中無休
駐車場:無
入館料:¥300

関連サイト長崎市ド・ロ神父記念館

出津教会堂

教会建築には珍しく2つの搭が建っています。
大きな塔の中にはアンジェラスの鐘が納められ
長部のマリア像はフランスから取り寄せたもの
です。
 
風が強い外海の気候を考慮し、軒高を低く抑えられ
ています。
 
◆Pick up◆

出津教会

建設年:1608年(明治14)
設計・施工:マルク・マリ・ド・ロ神父
構造:煉瓦造瓦葺き平屋建て

◯明治期にド・ロ神父の設計・施工により2度に
 わたって増築されている。

◯2018年6月30日 世界文化遺産登録

 
基本的に堂内は撮影禁止になっています。
特徴として天井が低くフラットで白い壁、ステンド
グラスを設けない和室のような日本の伝統建築を
思わせます。
 
各所にド・ロ神父の特殊な手法が取り込まれており
ド・ロ神父の偉業の一つであり、文化財の価値が
高い教会です。
 
住所:長崎県長崎市西出津町2633
TELL:0959-621-3672
営業時間:9時00分~17時00
定休日:年中無休
駐車場:有
入館料:無料(寄付をお願いします)

関連サイトhttps://www.catholic-kurosaki.com/

 
寄り道ーーYORIMICHI
A little detour
野道キリシタン墓地
ド・ロ神父の軌跡を辿るなら最後に訪れましょう。
黒島で見かけたような十字架のお墓が並んでいま
す。
 
旧出津救助院から坂道を下って出津小学校の方へ
向かうとたくさんのお墓が急斜面に建っているので
すぐにわかります。
 
陽が落ちてから訪れたので雰囲気があります。恐怖
心がありましたが好奇心が勝り、最上段まで自然石
で作られた階段を登りました。
 
入口からわかりやすい場所に等身大のキリスト像
があってその近くにド・ロ神父のお墓があるため
すぐ見つけられます。
 
墓石は他と比べても立派で命日にはミサが行われる
など地域住民からとても慕われていることが伝わります。
 
急傾斜にある墓地からは集落全体が見渡せます。
この地で眠るド・ロ神父と多くの信徒たちが
出津集落を見守ってくれているかのようです。

総括ーーSummary

明治の時代に移り変わったにも関わらず貧しい
暮らしを強いられる村人のためにド・ロ神父は司教
という立場をはみ出し、私財を投資して社会福祉
事業に挺身して人々を救いました。
 
中央で主導権を争って国民を見ていなかった政府と
ド・ロ神父のような隣人愛の持ち主。
どちらについていくかは明白ですねーー
 
信仰の賜物なのか、使命感の強さがそうさせるのか
いずれにしろ、ド・ロ神父が外海の人々にとっての
救世主であることは間違いありません。もっと多く
の人にド・ロ神父の偉業が広まることを願いますーー
 
(次回)ーーもう一つの軍艦島
タイトルとURLをコピーしました